【2025】おひとりさまが検討したい生前契約「死後事務委任契約」をわかりやすく解説

【2025】おひとりさまが検討したい生前契約「死後事務委任契約」をわかりやすく解説

いわゆる「おひとりさま」が増加傾向にあり、65歳以上の人がいる世帯の約3割が単身世帯となっています。元々は夫婦2人の世帯であっても、配偶者に先立たれることでおひとりさま世帯となるケースも少なくありません。また、子どもがいても遠方に暮らしていたり疎遠になっていたりして、頼れない場合もあるでしょう。

そのような際に検討すべきなのが、生前契約の締結です。では、おひとりさまが締結すべき生前契約とは、どのようなものなのでしょうか?また、生前契約では、どのような内容を委任できるのでしょうか?今回は、おひとりさまが検討したい生前契約についてくわしく解説します。

なお、当サイト「家族葬のアイリス」は全国対応で葬儀のトータルサポートを行っています。生前契約の締結にあたって信頼できる葬儀社をお探しの際などには、家族葬のアイリスまでお気軽にお問い合わせください。資料請求は無料であり、葬儀社の選定にお役立ていただけます。

参照元:第1章 高齢化の状況(第1節 3)(内閣府)

おひとりさまの生前契約とは

「おひとりさまの生前契約」といった場合、死後事務委任契約を指すことが一般的です。死後事務委任契約とは、自身の死後に生じるさまざまな事務手続きを、信頼できる第三者に対して、生前元気なうちに委任しておく契約です。

おひとりさまの場合、「将来自分が亡くなったら、誰が葬儀をしてくれるのだろう?葬儀費用はどうなるのだろう?」、「自分が亡くなったら、今住んでいる賃貸住宅はどうなるのだろう?」などと不安に感じることも多いでしょう。元気なうちに、信頼できる第三者との間で死後事務委任契約を締結しておくことで、このような心配を抱えることなくこれからの人生を歩むことが可能となります。

おひとりさまが生前契約(死後事務委任契約)で委任できる主な内容

死後事務委任契約では、どのような事項を委任できるのでしょうか?おひとりさまが生前契約で定めておきたい主な内容を紹介します。

なお、生前契約を締結したからといって、必ずしもここで紹介した内容をすべて委任できるとは限りません。あくまでも受任者(死後事務を引き受けてくれる相手)との「契約」であり、実際に何を依頼するのかは受任者と相談したうえで決めることとなります。

  • 遺体の引き取り
  • 葬儀の施行
  • 死亡届などの届出
  • 医療費・施設利用費の清算
  • 賃貸住宅の明け渡し
  • 未払いの光熱費などの支払い

遺体の引き取り

ご逝去後は、ご遺体をいつまでも病院や施設に安置することはできません。いったんは誰かがご遺体を引き取り、安置場所まで搬送する必要が生じます。死後事務委任契約では、遺体の引き取りを委任できます。

葬儀の施行

死後事務委任契約では、葬儀の施行を委任できます。葬儀の内容は受任者に任せることもできるものの、受任者が検討を任せられては困る場合も多いでしょう。そのため、自身であらかじめ葬儀社や葬儀プランをある程度選定し、これを受任者に伝えておくとスムーズです。

葬儀社の選定でお困りの際は、家族葬のアイリスまでご相談ください。家族葬のアイリスは全国対応で葬儀のトータルサポートを行っており、火葬だけを行う直葬や家族葬、一般葬などさまざまな葬儀形態に対応しています。

死亡届などの届出

ご逝去後は、市区町村役場に死亡届を提出しなければなりません。死亡届を提出しなければ火葬に必要な火葬許可証が受け取れないため、早急に届け出る必要があります。

また、ほかにも年金の受給停止手続きや運転免許証の返還など、さまざまな手続きが必要となります。死後事務委任契約では、これらの行政手続きを委任できます。

医療費・施設利用費の清算

ご逝去前に発生した医療費や施設の利用料などは、ご逝去後に支払う必要が生じます。死後事務委任契約では、これらの支払い事務を委任できます。

賃貸住宅の明け渡し

賃貸住宅に住んでいる場合、ご逝去後は室内を片付け、退去しなければなりません。また、荷物を運び出して退去するまでの期間は家賃も発生するため、これも支払う必要があります。死後事務委任契約では、賃貸住宅の明け渡し手続きやご逝去後の家賃の支払い事務を委任できます。

未払いの光熱費などの支払い

水道代やガス代、電気代などは後払いであるため、ご逝去後に支払う必要が生じます。死後事務委任契約では、未払いの公共料金などの支払い事務を委任できます。

生前契約(死後事務委任契約)でできないこと

おひとりさまが生前契約(死後事務委任契約)に定めたからといって、実現できない事項も存在します。ここでは、生前契約の締結では実現できない主な事項を3つ解説します。

  • 遺産の配分を指定すること
  • 遺産の名義変更や解約に関すること
  • 生前に発生する手続き

遺産の配分を指定すること

死後事務委任契約では、「不動産は〇〇に相続させる」「預金のうち〇〇円は〇〇団体に寄付する」など、遺産の配分を決めることはできません。遺産の承継者や遺産の配分を決めたい場合には、別途遺言書を作成する必要があります。

遺産の名義変更や解約に関すること

死後事務委任契約では、遺産の名義変更や解約手続きを委任することはできません。これらの手続きを任せたい場合には、別途遺言書を作成したうえで、遺言書の実現を担う「遺言執行者」として指定する必要があります。

生前に発生する手続き

死後事務委任契約で委任できるのは、死後に発生する事務に限られます。生前の財産管理や老人ホームへの入所契約、入院手続き、介護サービス提供契約の締結など生前に発生する事務や生前の財産管理を任せたい場合には、死後事務委任契約とは別途、任意後見契約を締結しておく必要があります。

生前契約(死後事務委任契約)と任意後見契約・遺言との違い

先ほど解説したように、生前契約(死後事務委任契約)でできないことは、任意後見契約や遺言書によって補完できます。おひとりさまの場合には死後事務委任契約だけではなく、任意後見契約の締結や遺言書の作成も別途検討すべきでしょう。ここでは、死後事務委任契約と任意後見契約、遺言書の違いを整理して解説します。

任意後見契約との違い

死後事務委任契約と任意後見契約の違いは、「死後の事務を委任するか、生前の事務を委任するか」にあります。

なお、任意後見契約が発効するのは原則として本人の判断能力が不十分となり、受任者が裁判所に申し立て、「任意後見監督人」が選任された時点からです。判断能力が低下する前にも一部の事務を委任したい場合には、これと併せて「委任契約」も締結する必要があります。本人の状況ごとに対応する契約を整理すると、下の表のようになります。

本人の状況 対応する契約
生前 判断能力が十分 委任契約
判断能力が不十分

(かつ任意後見監督人が選任)

任意後見契約
死後 死後事務委任契約

信頼できる受任者候補がいる場合には、これらをすべて締結しておくとスムーズでしょう。

なお、任意後見契約は公正証書ですべきである一方で、委任契約と死後事務委任契約は特に方式は問われません。ただし、委任関係や委任した事項を明確にするため、これらはすべて公正証書で作成することが一般的です。

遺言との違い

遺言とは、死後の遺産の配分や遺産の承継者などを定めた書面です。死後事務委任契約では実現できない遺産の配分の指定や遺産の承継者の指定、遺言を実現する遺言執行者の指定などは、遺言で行います。

なお、遺言書は、法律(民法)に定められた方式に沿って作成しなければなりません。自分で手書きをする「自筆証書遺言」とする方法もあるものの、無効になるリスクを避けるため、公正証書での作成を検討するとよいでしょう。

おひとりさまの生前契約(死後事務委任契約)は誰と締結する?

おひとりさまが生前契約(死後事務委任契約)を締結する場合、受任者は誰にすればよいのでしょうか?ここでは、受任者の選択肢を紹介します。

  • 甥・姪などの親族
  • 内縁の妻・夫
  • 近隣に居住する友人
  • 弁護士・司法書士などの専門士業
  • 生前契約の受任を専門的に行う会社

なお、「契約」であるため、受任者を一方的に指定することはできません。受任者の候補を決めたらその候補者と相談し、相手が承諾してくれた場合に契約の締結へと進みます。

甥・姪などの親族

生前契約の受任者には、特別な資格などは必要ありません。そのため、甥や姪などの親族に頼れる相手がいるのであれば、その相手が有力な選択肢となるでしょう。

ただし、兄弟姉妹など年齢の近い相手を受任者とすることはおすすめできません。「死後の事務を依頼する」という性質上、自身より先に亡くなる可能性が低くない相手への委任は避けたほうがよいためです。

内縁の妻・夫

内縁の夫や妻がいる場合は、厳密には「おひとりさま」ではないでしょう。しかし、これらの相手は法律上の親族ではないため、戸籍謄本などで関係性を証明できず、実際に手続きがスムーズに進まない可能性があります。これに備え、お互いを受任者とした生前契約を締結しておくことをおすすめします。

近隣に居住する友人

「遠くの親戚より近くの他人」という言葉があるように、近隣に居住する友人などが頼りになる場合もあるでしょう。この場合には、その友人が受任者の候補の1人となります。

ただし、友人との年齢が近い場合、その友人が先に亡くなる可能性も否定できません。また、自身が亡くなった時点で存命であっても、高齢であり手続きを遂行できない可能性もあります。そのため、友人を受任者とするか否かはこれらも踏まえて慎重に検討すべきでしょう。

弁護士・司法書士などの専門士業

弁護士や司法書士、行政書士、社会福祉士などの専門士業に、受任者となってもらうことも可能です。

ただし、死後事務委任契約の受任者となる業務を受けているか否かは事務所によって異なります。また、委任できる事務の範囲が限られる場合もあるでしょう。そのため、委任の可否や委任できる内容などをあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

生前契約の受任を専門的に行う会社

株式会社や一般社団法人などの企業が、死後事務委任契約の受任者を積極的に請け負っている場合があります。会社などの団体であれば、個人とは異なり自身より先に「死亡」することはないため、この点で安心であるといえるでしょう。

ただし、このような会社は残念なことに、玉石混淆です。おひとりさまの増加という社会課題と向き合うために真摯に業務に励んでいる団体が存在する一方で、無責任に受任を受け、業務が立ち行かなったら撤退をしたり廃業したりする可能性も否定できません。

また、中には詐欺まがいであったり、必要以上に高額な契約をさせるなど不安に付け込んだりする悪徳な事業者も存在し、消費者庁からも注意喚起がされています。そのため、信頼できる会社であることを慎重に見極める目が必要です。

参照元:高齢者等終身サポート事業に関する事業者ガイドラインについて(消費者庁)

おひとりさまが生前契約を締結する主なメリット

おひとりさまが生前契約を締結することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、主なメリットを2つ解説します。

  • 死後の対応を任せられて安心できる
  • 疎遠な遺族に負担が生じづらくなる

死後の対応を任せられて安心できる

おひとりさまは、自身の死後について不安を感じることも多いでしょう。信頼できる相手と生前契約を締結しておくことで、安心して今後の人生を歩みやすくなります。

疎遠な遺族に負担が生じづらくなる

子どもや親族などと疎遠になっている場合、自身の死後に負担をかけたくない、世話になりたくないと考える場合もあるでしょう。しかし、生前契約を締結していなければ、近親者への連絡を避けることは困難です。

生前契約を締結しておくことで、疎遠な親族などに負担をかけづらくなります。

おひとりさまが生前契約を締結するデメリット・注意点

おひとりさまが生前契約を締結することには、デメリットや注意点もあります。ここでは、主なデメリットと注意点を4つ解説します。

  • 公正証書での作成が推奨されており、手間がかかる
  • 専門士業や会社を受託者とした場合にはまとまった報酬や預託金が発生する
  • 信頼できる相手を選定する必要がある
  • 認知症になってからでは契約締結が困難である

公正証書での作成が推奨されており、手間がかかる

先ほど解説したように、死後事務委任契約を公正証書とすることは必須ではありません。しかし、死後事務委任契約は本人が亡くなってから効力を発揮するという性質上、契約書の内容や真正性に疑義が生じた際に、本人に確かめることはできません。その結果、手続きが滞ってしまう可能性があるでしょう。そのような事態を避けるため、死後事務委任契約は公正証書とすることをおすすめします。

公正証書とするには、原則として公証役場に出向く必要があるほか、所定の手数料がかかります。死後事務委任だけを締結する場合の公証役場の手数料は原則として11,000円であるものの、別途用紙代(正本・謄本の取得費用)がかかるほか、内容によっては手数料が加算されることもあります。

参照元:公証事務(日本公証人連合会)

専門士業や会社を受託者とした場合にはまとまった報酬や預託金が発生する

受任者を専門士業とした場合や会社などの営利団体とした場合には、まとまった報酬が必要となるほか、契約締結時に一定の預託金を支払う必要が生じます。預託金や将来の葬儀の施行などに備えるものであり、少なくとも100万円程度は必要となることが多いでしょう。

報酬額や預託金の額は委任をする相手や委任内容などによって異なるため、あらかじめよく確認することをおすすめします。

信頼できる相手を選定する必要がある

生前契約の受任者は、信頼できる相手を選ばなければなりません。誤った相手を選任してしまうと、委任した事務が契約どおりに遂行してもらえない可能性があるほか、預託金などを「持ち逃げ」されるリスクも生じます。特に、親族以外に委任する場合には信頼できる相手であることを慎重に見極める必要があるでしょう。

認知症になってからでは契約締結が困難である

生前契約の締結は、判断能力が十分あるうちに行わなければなりません。

契約内容を理解できるだけの認知能力がないと公証役場に判断されると、契約を締結できないおそれが高くなります。また、認知症であることを隠して無理に契約を締結した場合には、後のトラブルの原因となりかねません。

そのため、生前契約の締結は判断能力が十分あるうちに行う必要があります。

おひとりさまが生前契約を締結する流れ

最後に、おひとりさまが生前契約を締結する基本の流れを解説します。

  • 生前契約の受任者候補を検討し、その相手と相談する
  • 専門家に相談をして、内容を検討する
  • 公証役場で契約を締結する

生前契約の受任者候補を検討し、その相手と相談する

生前契約は受任者との合意を前提とするものであり、一方的に受任者を指名することはできません。生前契約の締結を検討している場合には、まず受任者の候補者を決め、その相手と相談する必要があります。

専門家に相談をして、内容を検討する

受任者となることを相手が承諾してくれたら、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に相談をして具体的な契約内容を検討します。この段階で、委任契約や任意後見契約の締結、遺言書の作成なども併せて検討しておくとよいでしょう。

専門家によるアドバイスを必要とせず、必要書類の取り寄せなども自分で行える場合には、専門家を介さず公証役場に直接相談に出向くことも可能です。

公証役場で契約を締結する

締結する生前契約の内容が固まったら、公証役場で契約を締結します。契約の内容は当日伝えるのではなく、事前に公証役場に伝え、原案を作成してもらっておくことが一般的です。

まとめ

おひとりさまが検討しておくべき生前契約について、概要や締結のメリット・デメリット、受任者の候補などを解説しました。

死後の手続きをスムーズとするため、おひとりさまは生前契約を締結しておくことをおすすめします。生前契約を締結することでいざというときの安心感が生まれるほか、疎遠な親族に負担をかけづらくなります。

生前契約の締結に際しては、葬儀社や葬儀プランを検討しておくとよいでしょう。事前に葬儀について検討しておくことで自身が希望する葬儀を実現しやすくなるほか、受任者も安心しやすくなります。

家族葬のアイリスは全国対応で葬儀のトータルサポートを行っており、生前のご相談やお見積りにも対応しています。生前契約の締結にあたって葬儀社をご検討の際は、家族葬のアイリスまでお気軽にご相談ください。資料の請求やご相談に費用はかかりません。