バイクが大好きだったおじいちゃん
おじいちゃんは、旅行や釣りが好きで、85歳までは、バイクに乗ったり、庭木の手入れもすべて自分でこなすほど元気でした。数年前から体調を崩し入退院を繰り返すようになってからは、ときどき「家に帰りたい」と弱気な言葉を口にするようになりました。

息子である父たち兄弟は、小さなころから厳しく躾をうけ、おじいちゃんを「頑固者」と言うこともありましたが、私たち孫には一度も大きな声で叱りつけたことのないおじいちゃんでした。僕の記憶のなかには、いつでも優しく笑っているおじいちゃんしかいません。
父がおじいちゃんを北海道旅行に連れて行ったとき、今までは話せなかった大人の男同士の会話ができたと喜んでいたおじいちゃん。「お前も一人前の男になったら、お父さんを旅行に連れて行ってやりなさい」と私に嬉しそうに旅の思い出を話してくれました。
息子たちに慕われ尊敬されて、家族のことをいつも大事にしてきたおじいちゃんの人生は、私の理想です。私が反抗期だったころ、両親と喧嘩すると、おじいちゃんだけは私の味方になって、どんなことに腹を立てているのかを辛抱強く聞き出してくれました。
自分の気持ちを吐き出すと、とたんに子供っぽい理由で反抗していたことが恥ずかしくなりました。そんな私を察して、おじいちゃんは「昔、お前のお父さんを頭ごなしに叱ってしまったことがあって、あとからお父さんは悪くなかったと気づいたんだが、いまだに謝れないままだよ」と話してくれました。
今考えると、自分の失敗談を話すことで、私の恥ずかしさを取り除いてくれようとしたのかもしれません。
決してスマートではないけど、さりげない優しさを備えた強い日本男児。私がおじいちゃんに抱くイメージはそんな感じです。
庭の手入れが好きで、元気なころは多くの花を育てていました。そんなおじいちゃんの祭壇は「色とりどりの花で賑やかに飾ってあげたいね」と家族全員で決めました。花に囲まれたおじいちゃんの遺影を見ていると、おじいちゃんとの思い出が次々によみがえってきました。
私にも昨年子供ができ、父親の気持ちが少しわかるようになりました。命がつながっていくという意味を新たに実感しつつ、改めておじいちゃんに感謝することができたお葬式でした。

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