白雪姫の衣装
3年前の9月に愛娘をなくしました。まだ8歳になったばかりでした。娘は生まれつき軽度の障害と心臓疾患を持って生を授かりました。
親なら誰でも子供は元気に生まれてきてほしいと思うものです。初めて自分が父親になることを心から喜び、張り切っていた分、娘がハンディーを背負って生まれてきたことを、はじめは受け入れることができませんでした。
しかし、腕に抱いた娘の天使のような笑顔を見ると、そんな不安も吹き飛んでしまいました。この子を一生懸命育てようと強く思いました。仕事で遅くなって疲れて帰ってきても、娘の顔を見ているだけで、いつの間にか忙しさや仕事の辛さで固くなった心が自然とやわらいでいくのがわかりました。
最初の不安が嘘のように、日に日に大きくなっていく娘が可愛くて仕方がありませんでした。
お葬式の打ち合わせの際、「どんな些細なことでもよろしいので、ご希望はありませんか。」というエンディングプランナーの方の質問に対し、まだ気が動転し、気持ちの整理がつかなかった私達夫婦は「娘を可愛く送り出してあげたい」という曖昧な要望しか伝えることしかできませんでした。
しかし、その要望をしっかりと汲み取って頂いただき、明るい色とりどりの花で祭壇を飾っていただきました。
娘は眠る前に本を読み聞かせしてもらうことが大好きで、一番のお気に入りは「白雪姫」でした。この話をエンディングプランナーの方にお話しすると、「それならば、お嬢様を送り出す際の御洋服は、白雪姫の衣装はどうでしょうか」という提案をしていただきました。
また、祭壇を囲むために、娘の大好きだった七人の小人の人形を準備してくださいました。
メインキャラクターではないだけに人形を探すことの苦労を思うと、感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。
当日には娘のたくさんのお友達にも集まっていただき、こんなにも多くの人に娘は愛されていたのだと思うと誇らしい気持ちでした。
娘の沢山の写真も祭壇に飾って頂き、その写真達を見ていると、娘がくれたかけがえのない宝物のような日々を思い出しました。
守っているつもりだった娘から実は何度も何度も支えてもらっていたことに気づかされました。思わず泣きながら大きな声で「今までありがとう」と叫ぶと、娘への愛情と感謝で涙があふれました。
こちらの意見をしっかりと反映して頂き、楽しいことが大好きだった娘を明るくにぎやかに送り出すことができました。今は私たち夫婦を天国で優しく見守ってくれていると思います。