人は誰でもいずれは死を迎えることになります。
私たちは生存中に色々な経済活動を行って財産を築きますが、
それらは自分の所有物であるので
基本的には自由に使ったり処分したりすることができます。
自分が死んだ後の使い道についても法に反しない範囲で
自由に決めることができ、
誰に、
どの財産を、
どれだけ相続させる(承継させる)かを
自由に決めることができます。
しかし実際に死んだ後は意思表示ができないので、
生存中に死後の財産の分配方法を書面にして残しておくことでこれを実現できます。
その書面が「遺言書」です。
■遺言書は一定の法的効力を持つ
遺言書に記載された内容は
故人の最後の遺志ですから
最大限に尊重される必要があります。
したがって基本的にはそこに書かれたことが
最優先で実行されることになります。
例えば法定相続分を無視した分配内容である場合、
特定相続人の遺留分を害した内容であったとしても、
誰も異を唱えなければ遺言書の内容の通りに相続が実現されます。
当事者に不服や争いが発生した場合のみ、法律に従って修正されるのです。
遺言書最優先の原則があるということを覚えておきましょう。
■遺言書で実現できること
実際には財産関係以外のことも遺言で実現できます。
どんなことを実現できるかというと、
・相続人の排除と取消
・遺産分割方法の指定
・相続分の指定
・遺産分割の禁止
・遺言執行者の指定
・遺贈・寄付・信託についての指定
・子の認知
・未成年の子の後見人の指定
などです。
また付言事項といって、被相続人の気持ちを遺族に残すことができます。
付言事項は実は遺言書最大の工夫のしどころで、
感謝の気持ちを残しながら財産分けについての理由などを記すことによって
相続人の納得感を高め、争いを防ぐように文言が工夫されます。
ただし付言事項に記す「気持ち」や単なる「要望」は法的な拘束力は無く、
例えば「みんな仲良くしなさい」などという要望は法的に拘束力を持ちません。
情に訴える上手い文言で納得感を高めるのがミソです。
■遺言書を作成できる人
遺言書は15歳以上で意思能力がある人であればだれでも作成できます。
意思能力は簡単に言えば判断能力がしっかりある人です。
例えば精神に障害がある方や認知症の方は作成に一定の条件が付きます。
意思能力がない状態で作成された遺言書は法的に無効となるので、
実際にその疑いのある状態で作成された場合は
後日関係者の間で争いの火種を残すことになります。
また未成年者の法律行為には通常親の承諾が必要になりますが、
遺言書に関して言えば親など法定代理人の同意は不要です。